論理思考の独学を効率的に進めるためには?

以下の拙著でも解説したとおり、論理思考力を向上させるには、さまざまな問いを通して学習・訓練することが欠かせません。

書籍:伝説の「論理思考」講座: ケース問題で「広い視野」「深い思考」をいっきに鍛える

このとき、適切な人から「論理思考を教えてもらえる」環境があると良いのですが、現実的には、そのような環境が、身の回りになかったり、不十分だったりする人も少なくないと思います。

そのため、この記事では、「論理思考を独学」する上で、「どうすれば効率良く学習を進められるか」について、解説していきます。

 

※本記事は、まだ具体例が不十分ですので、後日加筆する予定です(2022/03/15)

 

目次

 

前提の確認: 論理思考の独学を進める上で考慮すべきことは?

さて、論理思考を独学する上で、まずは前提として把握しておきたいことが3点かあります。その内容を確認しておきましょう。

 

前提1:他者からレビュー・アドバイスをもらえると良いが、それが難しい場合が多い

まず、書籍でも解説した通り、思考中は「偏り・見落とし」が多数発生しやすいです。そして、偏り・見落としに気が付くためには、高い「客観的思考力」が必要です。

*書籍の解説の再掲:偏り・見落としが発生する箇所は、多くの人に共通している傾向があります。つまり、「(感覚的な思考だけだと)偏り・見落としが発生しやすい箇所」というものが存在しています。これらの偏り・見落としを回避するには、「感覚的な思考(経験と勘)」ではなく、「客観的思考」が重要になります。

 

ポイント:他者からのレビューなしで、どうやって偏りや見落としに気が付くか

しかし、「これから論理思考(客観的思考)の学習をはじめよう」という段階なのに、高い客観的思考力を持っているとは思えません。

この場合、「他の論理思考力・客観的思考力が高い人から、レビューやアドバイスをもらう」ことができると最も良いのですが、そのような環境にない方が大半かと思います。

そのため、他者からのレビューがなくても、偏り・見落としを拾うことができるような工夫が、独学する上で重要になります(ここを本記事で解説します)。

 

前提2:思考力を向上させるには、時間がかかる

書籍にも記載した通り、論理思考力の習得には時間がかかります

*書籍の解説の再掲:「本番(仕事など)」に対してだけでなく、「日常」の出来事に対して思考力を発揮することで、「思考力」と「知識の量」の両方を鍛えていくことが重要ですが、そのような「習慣」を付けて、実際に「思考力や知識の量の強化」の成果が出るまでには、最低でも数か月はかかります。

そのため、まずは「早めに訓練を始める」ことが重要です。そして、それに加えて、「長い目で見た訓練方法を採用する」ことが重要になります(ここを本記事で解説します)。

 

前提3: 不十分な検討を何回繰り返しても、上達は望めない

さて、思考力を発揮する「本番」は、時間に厳しい制限がある場合が多いです。

  • ケース面接でケース問題を解く場合: 30~45分程度
  • 実際の仕事で「結論仮説決め*」を行う場合:せいぜい数日(※他の仕事と並行で)

*書籍の内容の再掲:数時間~数十時間で、問いに対する結論の仮説を決める思考です(俗にいう「仮説思考」です)。

 

しかし、十分な思考力が身に着く前だと、上記のような「厳しい時間制限」の下で考えた結果は、「偏り・見落としばかり(広さも深さも不十分)」になる場合が大半です。

 

ポイント:本番と異なり、偏り・見落としのない思考を、訓練時に体験する必要がある

さて、このとき、この「偏り・見落としだらけ」の思考を何回に繰り返しても、適切な思考の訓練にはならない点に注意が必要です(以下の箇条書きを参照)。

  • 思考を広げる:
    • そもそも、「思い付きにくい切り口」をしっかり洗い出すことに、思考を広げることの難しさがある。
    • しかし、「本番」のような短い時間では、「思い付きにくい切り口」を洗い出せていない可能性が高いので、広げる訓練にならない。
  • 思考を深める
    • 多くの切り口を活用しながら試行錯誤するからこそ、深掘りの訓練になる。
    • 一方、狭い思考結果(少ない切り口だけ)で深掘りの思考をしても、「十分に思考を深めることができない」上に、「多くの切り口を活用するという思考錯誤ができない」ので、深掘りの訓練にならない。

 

だからこそ、訓練時は、「1つの問いに対して、多めの時間をかけながら、本番とは少し異なる方法で、広さと深さが十分な思考を実施する」ことで、少しずつ「あるべき思考を体験⇒慣れていく」ことが重要です(そのための工夫を本記事で解説します)

 

まとめ:上記の前提を踏まえた、独学の進め方は?

では、上記の3つの前提を踏まえた上で、どのように独学を進めていくべきでしょうか。本記事では、以下の2つに分けて、独学するときの工夫について解説します。

  • 工夫1: どんな「形式」で訓練すべきか?
  • 工夫2: どんな「問い」で訓練すべきか?

 

工夫1:どんな「形式」で訓練すべきか?

さて、本ブログでは、書籍と同様、「ケース問題」を利用して論理思考の訓練をすることを推奨しています*。そのため、この「工夫1」の「どんな形式で訓練すべきか」についても、基本的にケース問題を活用する前提で、解説を進めていきます。

*ケース問題を推奨している理由については、「書籍」や、次の「工夫2」の解説をご確認ください。

加えて、「前提1」で述べた通り、「他者からのレビュー・アドバイスをもらうことが難しい」場合を想定していきます。

 

上記の条件の場合、以下のプロセスで、独学を進めることが有効です

  • ステップ1:まずは一人でしっかり考えてみる
  • ステップ2:検討結果を少しねかせてみる
  • ステップ3:他の人に検討内容を共有してもらう
  • ステップ4:本格的に情報収集をしてみる
  • ステップ5:検討の内容・結果の復習をする

 

ポイントとしては、「1つの問いを、時間をかけて・入念に解く」ことで、「1つの問いから、多くのことを学習する」という部分になります。以下、上記の5つのステップの詳細を見ていきましょう。

 

ステップ1:まずは一人でしっかり考えてみる

まずは、「本番」のように、一人でじっくり考えてみることが有効です。このステップ1は、「1日以内」か、長くても「3日程度(※間を空けない・連続した日程)」で終わらせることを想定しています。

以下、細かいステップに分けて、流れを解説していきます。

 

ステップ1-1: 情報収集なしで、まずは考えてみる

まずは、机の前などで、情報収集なしで、一人で考えてみてください。

このとき、時間制限を設ける必要はありません(あくまで「訓練」なので)。

一方、長時間机の前で考えていても、次第に「思考が広がらない・深まらない」という状況になってくると思います。そうなったら、いったん検討をストップしてください(逆に、そうならない限りは、時間制限を設けずに、いったん色々と考えてみてください)。

おそらく、目安は「0.5時間~3時間」程度になるかと思いますが、これ以上の時間をかけても問題ありません。

 

また、後のステップのために、考えた内容を、「途中のプロセス」「結果」ともに、紙のメモの上に残しておいてください。

 

ステップ1-2: 簡単に情報収集してみる

次に、簡単な情報収集をしてみてください。ここで言う「簡単な情報収集」とは、手元のパソコンやスマートフォンによる、Web検索を活用した情報収集です。

具体的には、以下のようなWebサイトを探してみてください。

  • ビジネス誌のWebコラム
    • 東洋経済オンライン」などのビジネス誌のWebコラムには、各企業や業界に対して考察した記事が多数掲載されています。
    • これらの記事の中には、「対象の企業・業界が直面している課題」について討議しているものが多数存在します。
    • これらのコラムの中に、問いが対象としている企業や業界の記事がないか、検索してチェックしてみてください。
  • 対象企業のWebサイト
    • 消費財や小売りであれば、対象企業(対象が業界であれば、その業界内のとある企業)のホームページがあるはずです。
    • そのページで、「どんな商品・サービスを提供しているか」や「どんな販促・キャンペーンを実施しているか」を見てみると、業界や商材への理解が深まります。
    • 他にも、「IR・投資家向け情報のページの資料」を読むと、業界や企業が直面している課題を把握できることも少なくありません。
    • 加えて、対象の企業・業界が消費財の場合、オンラインショップ・ネットスーパーなどの、小売り側での扱いを見てみることも有効です。
  • 総合研究所などが公開しているレポート
    • PDFなどで、Webで公開されているレポートも多いです(総合研究所が発行している場合が多いです)。
    • 基本的には、ビジネス誌のWebコラムと同様の使い方をしてください。ただし、ビジネス誌のWebコラムよりも、「かための文章」かつ「本格的な内容」の場合が多いので、少しとっつきにくいかもしれません。
    • 余談ですが、検索ワードに「 filetype:pdf」とつけると、pdfファイルのみを効率的に検索しやすくなります。

 

加えて、場合によっては、以下のような情報収集をしても良いかと思います。

  • 家の中の商品を確認する
    • 消費財や家具・家電などであれば、家の中に存在しているかと思います。たとえば、消費財であれば、裏の「成分表示」や「パッケージデザイン」を含めて、確認してみてください。
  • 家族にインタビューしてみる
    • 家族にインタビューしてみることも有効です。たとえば、「どんな視点で、購入する野菜ジュースを決めるのか」「平日ランチの食事先をどんな視点で決めるのか、なぜマクドナルド(※検討対象の企業)を使わないのか」といった感じです。

 

いずれにしても、「ステップ1-1」の検討の直後にそのまま実施できる、短時間で実施できる情報収集に絞って実施してください。

あまり長時間実施しても仕方がないので、こちらも「0.5時間~3時間」で切り上げてください。

 

念のため注意ですが、この「簡単な情報収集」をする前に、必ず「ステップ1-1」のように、情報収集なしで、最低でも30分は考えてみてください。そうしないと、「ファクト仮説を置く(※どんなファクト仮説が必要かを考える)」といった訓練ができません。

 

ステップ1-3: 情報収集の結果を踏まえて、再度一人で考えてみる

「ステップ1-2の情報収集の結果」を踏まえつつ、「ステップ1-1の検討結果(紙の上のメモ)」を見ながら、改めて、ひとりでしっかり考えてみてください。

このとき、「すでに検討済みの内容を見直す」という形式になるため、ついつい「課題や打ち手(深める)」という結論に近い側に注力しがちですが、「切り口の洗い出し(広げる)」側も、改めて検討し直してください。

 

このとき、なぜ「ステップ1-1」の段階で検討できていなかった内容については、「どんな視点・切り口を見落としていた」から気が付けなかったのか、しっかり考えてみることが重要です。

そのために、まずは、どんな切り口がなかったのかを明確にしてください。その上で、その切り口を洗い出すためには、どんな検討をすれば良いのかを、考えてみてください(例:「とある主体に対する具体的なイメージが不足していた」「とある場面をフローで具体的にイメージできていなかった」「特徴を洗い出すときに、比較を十分に活用できていなかった」など)

 

検討時間については、ステップ1-1と同様に考えてください。目安は「0.5時間~3時間」ですが、思考を広げる・深めることが可能な限りは、検討を続けることが有効です。

 

まとめ

さて、いったんは、この「ステップ1」のとおり、短期集中で問いを解いてみることが重要です。

しかし、机の前でじっくり考えても、見落としのない検討ができるわけではありません。それでは、どうやって「見落とし」に気が付いていけば良いのでしょうか。そのための工夫を、以下のステップ2以降で解説していきます。

 

ステップ2:検討内容を少しねかせてみる(少し日をおいてみる)

見落としを減らすための方法は、「机の前に座って、じっくりと・集中して考える」だけではありません。あえて検討から離れて、少し検討内容を”ねかせて”みることも有効です。

たとえば、「何かをひらめく」「忘れていたことを“ふと”思い出す」といった思考は、「お風呂に入っているとき」「駅から家へと歩いているとき」など、「リラックス」しているタイミングであることが少なくありません(また、一晩寝るだけで、頭が整理されて、より見落としに気が付きやすくなることもあります)。

これは、論理思考においても同様です。ステップ1の段階で、しっかり考えて見落としていた内容を、「次の日に、お風呂に入っているときに気がついた」ということは少なくありません。

そのため、ステップ1の検討内容を、いったん紙のメモの上に残したうえで、少し検討からはなれて日々を過ごしてみてください(目安は数日程度です)。

その上で、もし見落としに気が付いた場合は、いったんメモした上で、時間を見つけて、「ステップ1-3」のような形の検討を、再度実施してみてください。

 

補足: 追加で情報収集をしても良い

このとき、単に何となく日常生活を過ごすだけでなく、追加で情報収集しても問題ありません。

たとえば、問いによっては、以下のような形で、日常生活の中で、自然と情報収集ができる(ある程度、受動的に情報収集できる)ものも少なくありません。

  • 消費財(例:野菜ジュース)
    • コンビニで昼食と一緒に野菜ジュースを買う場面があった
  • 小売り(例:弁当屋
    • 仕事帰りに、夕食を買うために弁当屋に立ち寄った

このような場面があった場合は、「なぜその商品・そのお店を選んだのかについて考えてみる」「店舗や売り場に、何か特徴や工夫はないかについて、チェックしてみる」ことが有効です。

 

また、より能動的に情報収集をしても問題ありません。その方法については、後の「ステップ4」と同様なので、詳細はステップ4で解説します。

 

ステップ3: 他の人に検討内容を共有してもらう

さて、一人で考えていては、気が付ける見落としに限界があります。

そのため、他の人からのアドバイスを貰うことが、やはり有効です。

このとき、「論理思考力の高い人」や「問いの対象分野に詳しい人」からアドバイスをもらえることがベストですが、すでに述べた通り、それが難しい人が多いのが現実です。

その場合、次善の策になりますが、「同じく論理思考の訓練をしている人と、お互いの検討内容を共有しあう」ことも有効です。以下、学生の場合を例として、その方法を解説します。

 

例-学生の場合:お互いの検討内容を共有するための勉強会を行う

たとえば、「学生の方が、ケース面接選考の対策として、ケース問題に取り組む」場合、周りを探せば、同様にケース面接対策をしている学生が存在する人が多いと思います。その場合、彼ら・彼女らと、ケース問題の勉強会を実施することが有効です。

 

この勉強会では、事前に同じケース問題を解いてきた上で、お互いの検討結果を共有しあうことになります。

そのとき、その場(勉強会の最中)にケース問題を解くことは、あまりおススメしません。なぜなら、勉強会という限られた時間の中で問いを解いた場合、狭い思考結果に終わりやすく、「見落としやすい箇所」に誰も気が付くことができないリスクが高くなるためです。この状態で、お互いの検討結果を共有しても、あまり有用な示唆や切り口を共有できない可能性が高いです。

そのため、すでに解説したステップ1&2のような検討を、事前にしっかり行った上で、勉強会で検討結果を共有することがおススメです。そうすることで、「見落としやすい箇所を、参加者の誰かが事前に洗い出せていた」という可能性を高めることができます。

*また、お互いが共有する検討内容が増えることで、「勉強会の最中に、共有された検討内容を基に議論・検討することで、別の見落としに気がつくことができた」という可能性も高めることができます

 

余談ですが、このとき、あえて「ケース面接対策をしていない人」に、勉強会に参加してもらうことも有効です。なぜなら、対策をしていない(型にはまっていない)おかげで、かえって違う視点・切り口を洗い出せることが少なくないからです

*もちろん、継続的に参加してもらうことは難しいと思いますので、スポット参加になると思います。

 

注意:打ち手や課題ではなく、その背景にある「検討の視点・切り口」を学ぶこと

さて、共有会を実施するとき、注意したい点があります。

まず、他の参加者の検討結果を参考にするとき、ついつい「打ち手」に集中してしまう人が少なくありません。しかし、「打ち手」というのは、全く同じ問いでないと適用できない場合が少なくありません(同じ業界・商材の問いでも、前提条件*が少し変わるだけで、有用な打ち手は変化します)。

*たとえば、書籍で紹介した、「野菜ジュースのシェア二位企業」の問いにおける「シェア2位」という条件や、「アフリカの航空会社が自然公園事業を実施すべきか否か」の問いにおける「アフリカの航空会社(自然公園事業の実施主体)」という条件が該当します。これらの条件がなくなるだけで、必要な検討内容が変化するため、結論も大きく変化する可能性が高くなります。

 

一方、課題や打ち手を導く背景にある「どんな切り口・視点で検討しているのか」ならば、他の問いでも活用できる可能性が高くなります。

 

基本的に、打ち手や課題などの「結論」に近づくほど、他の問いで活用しにくい情報・知識になります。そのため、そのため、打ち手や課題の背景にある「切り口・視点」を抽出・学習するように、注意してください。

 

ステップ4:本格的な情報収集をしてみる

さて、色々と検討の視点・切り口を整理できたら、自分の検討結果のチェックの意味合いを含めて、本格的な情報収集をしてみることが有効です。

 

すでに解説した通り、「ステップ1-2」や「ステップ2」で情報収集をしても問題ありません。

しかし、ステップ3で他の人に共有してもらった情報や、そこから抽出した視点・切り口を踏まえることで、情報収集の内容や中身が、以下の様に変化します。

  • 情報収集する範囲が拡大している
  • 同じ情報・文章を読んだとしても、(それを解釈する視点が豊富になっていることで)より多くの示唆を抽出できる

そのため、ステップ3の後に、改めて情報収集をすることが有効です。

 

情報収集の方法は?

情報収集の方法は、いくつか存在します。

まずは、すでに「ステップ1-2」で解説したような、「家でも実施できる情報収集」です。

  • ビジネス誌のWebコラム
  • 対象の企業のWebサイト
  • 総合研究所などが公開しているレポート

特に、「総合研究所のレポート」のような本格的なものは、このステップ4のタイミングで読んだ方が良いかもしれません。ステップ3までの検討で、多様な切り口・視点を把握した後なので、レポートからより多くの情報を読み取れるかと思います。

 

また、業界について解説した書籍を読んでみることも有効です(たとえば、「○○業界のことが良くわかる本」といったタイトルの書籍です)。

書籍なので、読むのに時間がかかりますが、初心者向けに書かれた情報・文章なので、「課題や打ち手」だけでなく「現状把握(多様な切り口)」的な内容も含めて、より多くの知識・示唆を得ることが可能です。そのため、基礎的な見落としがないかをチェックする方法として、有用だと思われます。

 

他にも、実際の現場(売り場)を見に行ってみることも有効です(以下、一例です)。

  • 売店: 業態に応じて、「実際に利用してみる」「見学に行ってみる」など。
  • 消費財: その商品が売られている小売店の売り場を見に行ってみる

加えて、現場(売り場)の特徴に気が付きやすくするためには、比較を活用することが有効です(同じ業態でも、企業が違えば、現場・売り場の様子は大きく異なります)。そのため、複数企業の現場・売り場を見に行くことで、さまざまな現場・売り場を比較してみることを意識してください。

 

そして、上記のような情報収集から得た情報を基に、改めて「ステップ1-3」と同様、再度一人でしっかりと考えてみてください。

 

ステップ5: 検討の内容・結果の復習をする

さて、上記のステップ1~4で、さまざまな検討を実施したと思います。そうしたら、最後に「復習」をしておくことが有効です。

この「復習」には、いくつかのアプローチがあります。以下、それぞれのアプローチについて解説しておきます。

 

復習1:検討内容から、視点・切り口を抽出しておく

さて、「情報収集をして得た情報」の中では、ついつい「課題・打ち手」といった、結論に近い側に集中してしまいやすいです。しかし、結論に近い内容ほど、問いが少し変わるだけで、大きく変化しやすいです。

*すでに、ステップ3の「注意」の中で解説したとおりです

 

そのため、検討内容(情報収集の結果を含む)から、改めて「物事を見る視点・切り口」を抽出しておくことが有効です。

 

復習2:過去の知識・検討結果との関連付けをしておく

これについては、書籍の終盤の「本編6:日常から知識を蓄積する」でも解説しました。

今回解いた問いを、過去の問いと関連付け・一般化しておくことで、他の問いを解くときに、スムーズ&精度の高い結論仮説を設定しやすくなります。

*書籍の内容の再掲: たとえば、「1000円カット」「フィットネスクラブ」などの問いの課題を関連付けすることで、小売系の業界は「すいている時間帯の客数を増やす」ことが課題になりやすい件に言及しました。

 

今後の「本番」に向けて、検討スピードを上げるためにも、ぜひ実施しておいてください。

 

まとめ

以上のプロセスを、さまざまな問いで繰り返していくことになります。

このとき、ついつい「問いを多くこなす」ことに注力してしまう人が少なくありません。しかし、上記のプロセスで解説したように、「一つの問いを入念に解く」ことの方が重要であることに、改めて注意してください。

また、すでに述べた通り、いきなり短時間で解こうとするのはNGです。まずは、「長い時間を使っても良いので、十分に広く・深い思考を実施・体験」しながら、少しずつ検討時間を短くしていくようにしてください。

 

さて、以上のような「形式」で訓練していく上で、「どのような問いを選択すべきか」に関する工夫を、次に解説します。

 

工夫2:どんな「問い」で訓練すべきか?

さて、論理思考の訓練を進めていく上で、どんな問いで訓練すると良いのでしょうか。

もちろん、「現実の仕事や学業で取り組む問い」に対して、まずはしっかり考えることが重要です。しかし、「現実の仕事・学業で取り組む問い」が、論理思考の訓練・学習の題材として、優れているとは限りません(また、問いの数が十分ではない可能性も高いです)。

そのため、訓練用の問いで、論理思考の訓練を進めていくことも有効です。

 

前提:訓練用として、適切な問いとは?

では、「訓練用に適切な問い」とは、どのような問いなのでしょうか。

まず、「感覚的な思考(経験と勘)」でも、大筋で正しい打ち手・結論が導けてしまう問いでは、思考力向上の訓練にならない点に注意です。

たとえば、以下のような問いは、訓練の題材として不十分です。

  • NG条件1:重要な課題や切り口が、感覚的な思考だけで洗い出せてしまう問い
    • たとえば、「消費者の視点を十分に考えれば、重要な課題や切り口が洗い出せてしまう」ような問いが該当します。
    • この場合、感覚的に思いつきやすい検討をするだけで、重大な見落としを回避できることになります。
  • NG条件2:詳し過ぎる分野の問い
    • たとえば、「勤めている業界の問い」や「大学の専攻分野の問い」が該当します。
    • この場合、普段の仕事・学業の中で、さまざまな知識・切り口や課題が、すでに頭の中で整理されている場合が多いです。その場合、わざわざ論理的に整理して考え直さなくても、感覚的に妥当な解を導くことが可能です

 

一方、以下のような問いは、「感覚的な思考(経験と勘)」はもちろん、「論理的・客観的思考」を駆使しても、ほとんど思考を「広げる」「深める」ことができません。

  • NG条件3:あまりに知識が少なすぎる問い
    • たとえば、「ポリエチレン・プラント(化学プラント)の効率化のために何をすべきか」という問いの場合、仮に類推を駆使したとしても、ほとんど何も考えられない人が大半だと思われます。

つまり、「知識が豊富すぎる」のも「知識が少なすぎる」のも、訓練の題材としてNGです。「適度な詳しさの問い」を選ぶことが重要です。

 

問いの候補は?

上記の条件を踏まえると、ケース面接選考で出題されているケース問題を利用することがおススメです。

なぜなら、採用選考のために「差をつける」必要があるため、上記の「前提」のような条件を網羅していることが多いからです。

特に、NG条件1の「重要な課題や切り口が、感覚的な思考(経験と勘)だけで導けてしまう問い」という条件は、他のNG条件と異なり、問いを見ただけで、自力で判断することは難しいです(問いを解き終わった後に判明する内容です)。

そのため、まずは「他の人が、採用選考の問題として適切であると判断している」という基準で、選択するのが現実的です。

 

特に、何度も出題されている問いの場合、良い問いである可能性が高いです。特に、「複数ファームで出題が見られる」問いの場合、それ相応の理由があるはずです。

以下、具体例をいくつか載せておきます

  • フィットネスクラブ
    • ※ジョブでも出題が見られる
  • カラオケボックス
  • 百貨店・郊外のショッピングモール
  • マクドナルド
    • ※ファストフードという、業界・業態指定は少ない
  • 旅行代理店
    • JTBが指定されることも多い
  • 家電量販店
  • 中食系
    • 弁当屋(ほっともっと)
    • 冷凍食品
    • スーパーのお惣菜コーナー
  • 新幹線の車内販売
    • コーヒーのみ、ドリンク全般、車内販売全般
  • 文房具・筆記用具
    • 文房具の販売店の場合と、文房具メーカーの場合がある
  • 各種ソフトドリンク
    • カテゴリ:野菜ジュース、缶コーヒー、ミネラルウォーター
    • ブランド:ボルビック、レッドブル
  • コーヒー・カフェ系

 

上記の分野・業界の問いが、以下のような形式で出題されます。

  • 「対象企業の売上金額を上げる」「対象企業のシェアを上げる」「業界の市場規模を拡大する」などのビジネスケースの形式
  • 「売上金額の推定」「市場規模の推定」などのフェルミ推定の形式
  • 「売上規模を推定し、売上を増やすための施策を考えてください」などのフェルミ推定とビジネスケースの両方を含めた形式

 

補足:訓練に使用する問いを選択するときのその他視点

余談ですが、上記の「前提」以外にも、以下の条件を満たすような問いの方が、より望ましいです。

  • 問いを解いた後に、見に行けるような現場がある
    • この場合、自力で見落としに気が付きやすくなります
    • 具体的には、小売りや消費財などの業界・商材が該当します
  • Web記事や書籍が豊富である
    • この場合、自力で見落としに気が付きやすくなる。
    • 具体的には、「市場規模がある程度大きい業界」や「消費者に接している(親しみやすい、知名度が高い)業界・商材」の場合、Web記事や書籍が豊富であることが多いです。
    • 実際に、AamzonやGoogleで検索してみて、どの程度の検索結果が表示されるかを確認してみてください。

 

もし、十分な数の問いの候補がある場合、上記の条件も考慮してみてください。

 

まとめ

「論理思考の独学の進め方」の解説は以上になります。

上記のように、「訓練の題材として適切な問い」に対して、検討時間が長くなってもよいので、「広く・深く検討する」というプロセスを回していくことが有効です。

 

補足:推薦図書

 

最後に、独学における推薦図書を紹介しておきます(本記事で紹介した「ケース問題を活用した訓練」とは異なる内容の書籍になります)。

 

・論点思考

※検討を先に進める(深掘りする)うえで、まずは「論点」の把握が必須という内容です(「論点の把握」は、「課題の特定」と近い概念です)。まずは、論理思考の前提として必要となる、問題解決における「課題解決思考」を学習する書籍として、おススメです。

 

 

・戦略思考トレーニン

※ビジネス上の施策を、クイズ形式で紹介しています。以下のような用途で、ぜひ読んでみてください。

  • ビジネスにおける課題解決の事例の知識を増やす
    • 打ち手や課題の背景にある「検討の視点・切り口」を、ある程度自分で抽出しながら読んでください。
  • 「既存の打ち手から課題を抽出する」という思考の訓練をする