以下の拙著でも解説したとおり、論理思考力を向上させるには、さまざまな問いを通して学習・訓練することが欠かせません。
書籍:伝説の「論理思考」講座: ケース問題で「広い視野」「深い思考」をいっきに鍛える
このとき、適切な人から「論理思考を教えてもらえる」環境があると良いのですが、現実的には、そのような環境が、身の回りになかったり、不十分だったりする人も少なくないと思います。
そのため、この記事では、「論理思考を独学」する上で、「どうすれば効率良く学習を進められるか」について、解説していきます。
※本記事は、まだ具体例が不十分ですので、後日加筆する予定です(2022/03/15)
目次
- 前提の確認: 論理思考の独学を進める上で考慮すべきことは?
- 工夫1:どんな「形式」で訓練すべきか?
- 工夫2:どんな「問い」で訓練すべきか?
- まとめ
前提の確認: 論理思考の独学を進める上で考慮すべきことは?
さて、論理思考を独学する上で、まずは前提として把握しておきたいことが3点かあります。その内容を確認しておきましょう。
前提1:他者からレビュー・アドバイスをもらえると良いが、それが難しい場合が多い
まず、書籍でも解説した通り、思考中は「偏り・見落とし」が多数発生しやすいです。そして、偏り・見落としに気が付くためには、高い「客観的思考力」が必要です。
*書籍の解説の再掲:偏り・見落としが発生する箇所は、多くの人に共通している傾向があります。つまり、「(感覚的な思考だけだと)偏り・見落としが発生しやすい箇所」というものが存在しています。これらの偏り・見落としを回避するには、「感覚的な思考(経験と勘)」ではなく、「客観的思考」が重要になります。
ポイント:他者からのレビューなしで、どうやって偏りや見落としに気が付くか
しかし、「これから論理思考(客観的思考)の学習をはじめよう」という段階なのに、高い客観的思考力を持っているとは思えません。
この場合、「他の論理思考力・客観的思考力が高い人から、レビューやアドバイスをもらう」ことができると最も良いのですが、そのような環境にない方が大半かと思います。
そのため、他者からのレビューがなくても、偏り・見落としを拾うことができるような工夫が、独学する上で重要になります(ここを本記事で解説します)。
前提2:思考力を向上させるには、時間がかかる
書籍にも記載した通り、論理思考力の習得には時間がかかります
*書籍の解説の再掲:「本番(仕事など)」に対してだけでなく、「日常」の出来事に対して思考力を発揮することで、「思考力」と「知識の量」の両方を鍛えていくことが重要ですが、そのような「習慣」を付けて、実際に「思考力や知識の量の強化」の成果が出るまでには、最低でも数か月はかかります。
そのため、まずは「早めに訓練を始める」ことが重要です。そして、それに加えて、「長い目で見た訓練方法を採用する」ことが重要になります(ここを本記事で解説します)。
前提3: 不十分な検討を何回繰り返しても、上達は望めない
さて、思考力を発揮する「本番」は、時間に厳しい制限がある場合が多いです。
- ケース面接でケース問題を解く場合: 30~45分程度
- 実際の仕事で「結論仮説決め*」を行う場合:せいぜい数日(※他の仕事と並行で)
*書籍の内容の再掲:数時間~数十時間で、問いに対する結論の仮説を決める思考です(俗にいう「仮説思考」です)。
しかし、十分な思考力が身に着く前だと、上記のような「厳しい時間制限」の下で考えた結果は、「偏り・見落としばかり(広さも深さも不十分)」になる場合が大半です。
ポイント:本番と異なり、偏り・見落としのない思考を、訓練時に体験する必要がある
さて、このとき、この「偏り・見落としだらけ」の思考を何回に繰り返しても、適切な思考の訓練にはならない点に注意が必要です(以下の箇条書きを参照)。
- 思考を広げる:
- そもそも、「思い付きにくい切り口」をしっかり洗い出すことに、思考を広げることの難しさがある。
- しかし、「本番」のような短い時間では、「思い付きにくい切り口」を洗い出せていない可能性が高いので、広げる訓練にならない。
- 思考を深める
- 多くの切り口を活用しながら試行錯誤するからこそ、深掘りの訓練になる。
- 一方、狭い思考結果(少ない切り口だけ)で深掘りの思考をしても、「十分に思考を深めることができない」上に、「多くの切り口を活用するという思考錯誤ができない」ので、深掘りの訓練にならない。
だからこそ、訓練時は、「1つの問いに対して、多めの時間をかけながら、本番とは少し異なる方法で、広さと深さが十分な思考を実施する」ことで、少しずつ「あるべき思考を体験⇒慣れていく」ことが重要です(そのための工夫を本記事で解説します)
まとめ:上記の前提を踏まえた、独学の進め方は?
では、上記の3つの前提を踏まえた上で、どのように独学を進めていくべきでしょうか。本記事では、以下の2つに分けて、独学するときの工夫について解説します。
- 工夫1: どんな「形式」で訓練すべきか?
- 工夫2: どんな「問い」で訓練すべきか?
工夫1:どんな「形式」で訓練すべきか?
さて、本ブログでは、書籍と同様、「ケース問題」を利用して論理思考の訓練をすることを推奨しています*。そのため、この「工夫1」の「どんな形式で訓練すべきか」についても、基本的にケース問題を活用する前提で、解説を進めていきます。
*ケース問題を推奨している理由については、「書籍」や、次の「工夫2」の解説をご確認ください。
加えて、「前提1」で述べた通り、「他者からのレビュー・アドバイスをもらうことが難しい」場合を想定していきます。
上記の条件の場合、以下のプロセスで、独学を進めることが有効です
- ステップ1:まずは一人でしっかり考えてみる
- ステップ2:検討結果を少しねかせてみる
- ステップ3:他の人に検討内容を共有してもらう
- ステップ4:本格的に情報収集をしてみる
- ステップ5:検討の内容・結果の復習をする
ポイントとしては、「1つの問いを、時間をかけて・入念に解く」ことで、「1つの問いから、多くのことを学習する」という部分になります。以下、上記の5つのステップの詳細を見ていきましょう。
ステップ1:まずは一人でしっかり考えてみる
まずは、「本番」のように、一人でじっくり考えてみることが有効です。このステップ1は、「1日以内」か、長くても「3日程度(※間を空けない・連続した日程)」で終わらせることを想定しています。
以下、細かいステップに分けて、流れを解説していきます。
ステップ1-1: 情報収集なしで、まずは考えてみる
まずは、机の前などで、情報収集なしで、一人で考えてみてください。
このとき、時間制限を設ける必要はありません(あくまで「訓練」なので)。
一方、長時間机の前で考えていても、次第に「思考が広がらない・深まらない」という状況になってくると思います。そうなったら、いったん検討をストップしてください(逆に、そうならない限りは、時間制限を設けずに、いったん色々と考えてみてください)。
おそらく、目安は「0.5時間~3時間」程度になるかと思いますが、これ以上の時間をかけても問題ありません。
また、後のステップのために、考えた内容を、「途中のプロセス」「結果」ともに、紙のメモの上に残しておいてください。
ステップ1-2: 簡単に情報収集してみる
次に、簡単な情報収集をしてみてください。ここで言う「簡単な情報収集」とは、手元のパソコンやスマートフォンによる、Web検索を活用した情報収集です。
具体的には、以下のようなWebサイトを探してみてください。
- ビジネス誌のWebコラム
- 対象企業のWebサイト
- 総合研究所などが公開しているレポート
加えて、場合によっては、以下のような情報収集をしても良いかと思います。
- 家の中の商品を確認する
- 家族にインタビューしてみる
- 家族にインタビューしてみることも有効です。たとえば、「どんな視点で、購入する野菜ジュースを決めるのか」「平日ランチの食事先をどんな視点で決めるのか、なぜマクドナルド(※検討対象の企業)を使わないのか」といった感じです。
いずれにしても、「ステップ1-1」の検討の直後にそのまま実施できる、短時間で実施できる情報収集に絞って実施してください。
あまり長時間実施しても仕方がないので、こちらも「0.5時間~3時間」で切り上げてください。
念のため注意ですが、この「簡単な情報収集」をする前に、必ず「ステップ1-1」のように、情報収集なしで、最低でも30分は考えてみてください。そうしないと、「ファクト仮説を置く(※どんなファクト仮説が必要かを考える)」といった訓練ができません。
ステップ1-3: 情報収集の結果を踏まえて、再度一人で考えてみる
「ステップ1-2の情報収集の結果」を踏まえつつ、「ステップ1-1の検討結果(紙の上のメモ)」を見ながら、改めて、ひとりでしっかり考えてみてください。
このとき、「すでに検討済みの内容を見直す」という形式になるため、ついつい「課題や打ち手(深める)」という結論に近い側に注力しがちですが、「切り口の洗い出し(広げる)」側も、改めて検討し直してください。
このとき、なぜ「ステップ1-1」の段階で検討できていなかった内容については、「どんな視点・切り口を見落としていた」から気が付けなかったのか、しっかり考えてみることが重要です。
そのために、まずは、どんな切り口がなかったのかを明確にしてください。その上で、その切り口を洗い出すためには、どんな検討をすれば良いのかを、考えてみてください(例:「とある主体に対する具体的なイメージが不足していた」「とある場面をフローで具体的にイメージできていなかった」「特徴を洗い出すときに、比較を十分に活用できていなかった」など)
検討時間については、ステップ1-1と同様に考えてください。目安は「0.5時間~3時間」ですが、思考を広げる・深めることが可能な限りは、検討を続けることが有効です。
まとめ
さて、いったんは、この「ステップ1」のとおり、短期集中で問いを解いてみることが重要です。
しかし、机の前でじっくり考えても、見落としのない検討ができるわけではありません。それでは、どうやって「見落とし」に気が付いていけば良いのでしょうか。そのための工夫を、以下のステップ2以降で解説していきます。
ステップ2:検討内容を少しねかせてみる(少し日をおいてみる)
見落としを減らすための方法は、「机の前に座って、じっくりと・集中して考える」だけではありません。あえて検討から離れて、少し検討内容を”ねかせて”みることも有効です。
たとえば、「何かをひらめく」「忘れていたことを“ふと”思い出す」といった思考は、「お風呂に入っているとき」「駅から家へと歩いているとき」など、「リラックス」しているタイミングであることが少なくありません(また、一晩寝るだけで、頭が整理されて、より見落としに気が付きやすくなることもあります)。
これは、論理思考においても同様です。ステップ1の段階で、しっかり考えて見落としていた内容を、「次の日に、お風呂に入っているときに気がついた」ということは少なくありません。
そのため、ステップ1の検討内容を、いったん紙のメモの上に残したうえで、少し検討からはなれて日々を過ごしてみてください(目安は数日程度です)。
その上で、もし見落としに気が付いた場合は、いったんメモした上で、時間を見つけて、「ステップ1-3」のような形の検討を、再度実施してみてください。
補足: 追加で情報収集をしても良い
このとき、単に何となく日常生活を過ごすだけでなく、追加で情報収集しても問題ありません。
たとえば、問いによっては、以下のような形で、日常生活の中で、自然と情報収集ができる(ある程度、受動的に情報収集できる)ものも少なくありません。
このような場面があった場合は、「なぜその商品・そのお店を選んだのかについて考えてみる」「店舗や売り場に、何か特徴や工夫はないかについて、チェックしてみる」ことが有効です。
また、より能動的に情報収集をしても問題ありません。その方法については、後の「ステップ4」と同様なので、詳細はステップ4で解説します。
ステップ3: 他の人に検討内容を共有してもらう
さて、一人で考えていては、気が付ける見落としに限界があります。
そのため、他の人からのアドバイスを貰うことが、やはり有効です。
このとき、「論理思考力の高い人」や「問いの対象分野に詳しい人」からアドバイスをもらえることがベストですが、すでに述べた通り、それが難しい人が多いのが現実です。
その場合、次善の策になりますが、「同じく論理思考の訓練をしている人と、お互いの検討内容を共有しあう」ことも有効です。以下、学生の場合を例として、その方法を解説します。
例-学生の場合:お互いの検討内容を共有するための勉強会を行う
たとえば、「学生の方が、ケース面接選考の対策として、ケース問題に取り組む」場合、周りを探せば、同様にケース面接対策をしている学生が存在する人が多いと思います。その場合、彼ら・彼女らと、ケース問題の勉強会を実施することが有効です。
この勉強会では、事前に同じケース問題を解いてきた上で、お互いの検討結果を共有しあうことになります。
そのとき、その場(勉強会の最中)にケース問題を解くことは、あまりおススメしません。なぜなら、勉強会という限られた時間の中で問いを解いた場合、狭い思考結果に終わりやすく、「見落としやすい箇所」に誰も気が付くことができないリスクが高くなるためです。この状態で、お互いの検討結果を共有しても、あまり有用な示唆や切り口を共有できない可能性が高いです。
そのため、すでに解説したステップ1&2のような検討を、事前にしっかり行った上で、勉強会で検討結果を共有することがおススメです。そうすることで、「見落としやすい箇所を、参加者の誰かが事前に洗い出せていた」という可能性を高めることができます。
*また、お互いが共有する検討内容が増えることで、「勉強会の最中に、共有された検討内容を基に議論・検討することで、別の見落としに気がつくことができた」という可能性も高めることができます
余談ですが、このとき、あえて「ケース面接対策をしていない人」に、勉強会に参加してもらうことも有効です。なぜなら、対策をしていない(型にはまっていない)おかげで、かえって違う視点・切り口を洗い出せることが少なくないからです
*もちろん、継続的に参加してもらうことは難しいと思いますので、スポット参加になると思います。
注意:打ち手や課題ではなく、その背景にある「検討の視点・切り口」を学ぶこと
さて、共有会を実施するとき、注意したい点があります。
まず、他の参加者の検討結果を参考にするとき、ついつい「打ち手」に集中してしまう人が少なくありません。しかし、「打ち手」というのは、全く同じ問いでないと適用できない場合が少なくありません(同じ業界・商材の問いでも、前提条件*が少し変わるだけで、有用な打ち手は変化します)。
*たとえば、書籍で紹介した、「野菜ジュースのシェア二位企業」の問いにおける「シェア2位」という条件や、「アフリカの航空会社が自然公園事業を実施すべきか否か」の問いにおける「アフリカの航空会社(自然公園事業の実施主体)」という条件が該当します。これらの条件がなくなるだけで、必要な検討内容が変化するため、結論も大きく変化する可能性が高くなります。
一方、課題や打ち手を導く背景にある「どんな切り口・視点で検討しているのか」ならば、他の問いでも活用できる可能性が高くなります。
基本的に、打ち手や課題などの「結論」に近づくほど、他の問いで活用しにくい情報・知識になります。そのため、そのため、打ち手や課題の背景にある「切り口・視点」を抽出・学習するように、注意してください。
ステップ4:本格的な情報収集をしてみる
さて、色々と検討の視点・切り口を整理できたら、自分の検討結果のチェックの意味合いを含めて、本格的な情報収集をしてみることが有効です。
すでに解説した通り、「ステップ1-2」や「ステップ2」で情報収集をしても問題ありません。
しかし、ステップ3で他の人に共有してもらった情報や、そこから抽出した視点・切り口を踏まえることで、情報収集の内容や中身が、以下の様に変化します。
- 情報収集する範囲が拡大している
- 同じ情報・文章を読んだとしても、(それを解釈する視点が豊富になっていることで)より多くの示唆を抽出できる
そのため、ステップ3の後に、改めて情報収集をすることが有効です。
情報収集の方法は?
情報収集の方法は、いくつか存在します。
まずは、すでに「ステップ1-2」で解説したような、「家でも実施できる情報収集」です。
- ビジネス誌のWebコラム
- 対象の企業のWebサイト
- 総合研究所などが公開しているレポート
特に、「総合研究所のレポート」のような本格的なものは、このステップ4のタイミングで読んだ方が良いかもしれません。ステップ3までの検討で、多様な切り口・視点を把握した後なので、レポートからより多くの情報を読み取れるかと思います。
また、業界について解説した書籍を読んでみることも有効です(たとえば、「○○業界のことが良くわかる本」といったタイトルの書籍です)。
書籍なので、読むのに時間がかかりますが、初心者向けに書かれた情報・文章なので、「課題や打ち手」だけでなく「現状把握(多様な切り口)」的な内容も含めて、より多くの知識・示唆を得ることが可能です。そのため、基礎的な見落としがないかをチェックする方法として、有用だと思われます。
他にも、実際の現場(売り場)を見に行ってみることも有効です(以下、一例です)。
加えて、現場(売り場)の特徴に気が付きやすくするためには、比較を活用することが有効です(同じ業態でも、企業が違えば、現場・売り場の様子は大きく異なります)。そのため、複数企業の現場・売り場を見に行くことで、さまざまな現場・売り場を比較してみることを意識してください。
そして、上記のような情報収集から得た情報を基に、改めて「ステップ1-3」と同様、再度一人でしっかりと考えてみてください。
ステップ5: 検討の内容・結果の復習をする
さて、上記のステップ1~4で、さまざまな検討を実施したと思います。そうしたら、最後に「復習」をしておくことが有効です。
この「復習」には、いくつかのアプローチがあります。以下、それぞれのアプローチについて解説しておきます。
復習1:検討内容から、視点・切り口を抽出しておく
さて、「情報収集をして得た情報」の中では、ついつい「課題・打ち手」といった、結論に近い側に集中してしまいやすいです。しかし、結論に近い内容ほど、問いが少し変わるだけで、大きく変化しやすいです。
*すでに、ステップ3の「注意」の中で解説したとおりです
そのため、検討内容(情報収集の結果を含む)から、改めて「物事を見る視点・切り口」を抽出しておくことが有効です。
復習2:過去の知識・検討結果との関連付けをしておく
これについては、書籍の終盤の「本編6:日常から知識を蓄積する」でも解説しました。
今回解いた問いを、過去の問いと関連付け・一般化しておくことで、他の問いを解くときに、スムーズ&精度の高い結論仮説を設定しやすくなります。
*書籍の内容の再掲: たとえば、「1000円カット」「フィットネスクラブ」などの問いの課題を関連付けすることで、小売系の業界は「すいている時間帯の客数を増やす」ことが課題になりやすい件に言及しました。
今後の「本番」に向けて、検討スピードを上げるためにも、ぜひ実施しておいてください。
まとめ
以上のプロセスを、さまざまな問いで繰り返していくことになります。
このとき、ついつい「問いを多くこなす」ことに注力してしまう人が少なくありません。しかし、上記のプロセスで解説したように、「一つの問いを入念に解く」ことの方が重要であることに、改めて注意してください。
また、すでに述べた通り、いきなり短時間で解こうとするのはNGです。まずは、「長い時間を使っても良いので、十分に広く・深い思考を実施・体験」しながら、少しずつ検討時間を短くしていくようにしてください。
さて、以上のような「形式」で訓練していく上で、「どのような問いを選択すべきか」に関する工夫を、次に解説します。
工夫2:どんな「問い」で訓練すべきか?
さて、論理思考の訓練を進めていく上で、どんな問いで訓練すると良いのでしょうか。
もちろん、「現実の仕事や学業で取り組む問い」に対して、まずはしっかり考えることが重要です。しかし、「現実の仕事・学業で取り組む問い」が、論理思考の訓練・学習の題材として、優れているとは限りません(また、問いの数が十分ではない可能性も高いです)。
そのため、訓練用の問いで、論理思考の訓練を進めていくことも有効です。
前提:訓練用として、適切な問いとは?
では、「訓練用に適切な問い」とは、どのような問いなのでしょうか。
まず、「感覚的な思考(経験と勘)」でも、大筋で正しい打ち手・結論が導けてしまう問いでは、思考力向上の訓練にならない点に注意です。
たとえば、以下のような問いは、訓練の題材として不十分です。
- NG条件1:重要な課題や切り口が、感覚的な思考だけで洗い出せてしまう問い
- たとえば、「消費者の視点を十分に考えれば、重要な課題や切り口が洗い出せてしまう」ような問いが該当します。
- この場合、感覚的に思いつきやすい検討をするだけで、重大な見落としを回避できることになります。
- NG条件2:詳し過ぎる分野の問い
- たとえば、「勤めている業界の問い」や「大学の専攻分野の問い」が該当します。
- この場合、普段の仕事・学業の中で、さまざまな知識・切り口や課題が、すでに頭の中で整理されている場合が多いです。その場合、わざわざ論理的に整理して考え直さなくても、感覚的に妥当な解を導くことが可能です
一方、以下のような問いは、「感覚的な思考(経験と勘)」はもちろん、「論理的・客観的思考」を駆使しても、ほとんど思考を「広げる」「深める」ことができません。
- NG条件3:あまりに知識が少なすぎる問い
- たとえば、「ポリエチレン・プラント(化学プラント)の効率化のために何をすべきか」という問いの場合、仮に類推を駆使したとしても、ほとんど何も考えられない人が大半だと思われます。
つまり、「知識が豊富すぎる」のも「知識が少なすぎる」のも、訓練の題材としてNGです。「適度な詳しさの問い」を選ぶことが重要です。
問いの候補は?
上記の条件を踏まえると、ケース面接選考で出題されているケース問題を利用することがおススメです。
なぜなら、採用選考のために「差をつける」必要があるため、上記の「前提」のような条件を網羅していることが多いからです。
特に、NG条件1の「重要な課題や切り口が、感覚的な思考(経験と勘)だけで導けてしまう問い」という条件は、他のNG条件と異なり、問いを見ただけで、自力で判断することは難しいです(問いを解き終わった後に判明する内容です)。
そのため、まずは「他の人が、採用選考の問題として適切であると判断している」という基準で、選択するのが現実的です。
特に、何度も出題されている問いの場合、良い問いである可能性が高いです。特に、「複数ファームで出題が見られる」問いの場合、それ相応の理由があるはずです。
以下、具体例をいくつか載せておきます
- フィットネスクラブ
- ※ジョブでも出題が見られる
- カラオケボックス
- 百貨店・郊外のショッピングモール
- マクドナルド
- ※ファストフードという、業界・業態指定は少ない
- 旅行代理店
- ※JTBが指定されることも多い
- 家電量販店
- 中食系
- 弁当屋(ほっともっと)
- 冷凍食品
- スーパーのお惣菜コーナー
- 新幹線の車内販売
- コーヒーのみ、ドリンク全般、車内販売全般
- 文房具・筆記用具
- 文房具の販売店の場合と、文房具メーカーの場合がある
- 各種ソフトドリンク
- カテゴリ:野菜ジュース、缶コーヒー、ミネラルウォーター
- ブランド:ボルビック、レッドブル
- コーヒー・カフェ系
上記の分野・業界の問いが、以下のような形式で出題されます。
- 「対象企業の売上金額を上げる」「対象企業のシェアを上げる」「業界の市場規模を拡大する」などのビジネスケースの形式
- 「売上金額の推定」「市場規模の推定」などのフェルミ推定の形式
- 「売上規模を推定し、売上を増やすための施策を考えてください」などのフェルミ推定とビジネスケースの両方を含めた形式
補足:訓練に使用する問いを選択するときのその他視点
余談ですが、上記の「前提」以外にも、以下の条件を満たすような問いの方が、より望ましいです。
- 問いを解いた後に、見に行けるような現場がある
- この場合、自力で見落としに気が付きやすくなります
- 具体的には、小売りや消費財などの業界・商材が該当します
- Web記事や書籍が豊富である
もし、十分な数の問いの候補がある場合、上記の条件も考慮してみてください。
まとめ
「論理思考の独学の進め方」の解説は以上になります。
上記のように、「訓練の題材として適切な問い」に対して、検討時間が長くなってもよいので、「広く・深く検討する」というプロセスを回していくことが有効です。
補足:推薦図書
最後に、独学における推薦図書を紹介しておきます(本記事で紹介した「ケース問題を活用した訓練」とは異なる内容の書籍になります)。
・論点思考
※検討を先に進める(深掘りする)うえで、まずは「論点」の把握が必須という内容です(「論点の把握」は、「課題の特定」と近い概念です)。まずは、論理思考の前提として必要となる、問題解決における「課題解決思考」を学習する書籍として、おススメです。
・戦略思考トレーニング
※ビジネス上の施策を、クイズ形式で紹介しています。以下のような用途で、ぜひ読んでみてください。
- ビジネスにおける課題解決の事例の知識を増やす
- 打ち手や課題の背景にある「検討の視点・切り口」を、ある程度自分で抽出しながら読んでください。
- 「既存の打ち手から課題を抽出する」という思考の訓練をする